お知らせ ほぼ日記

Vol.1 造形そのままを美に昇華したモダニズムの完成形。 LC2

わたしは甘いものが好きです。緑の中にいることも好きです。本も読みますがアニメも観ます。新年NHK Eテレで放送された大友克洋監督の「AKIRA」、作家魚豊さんの「チ。-地球の運動について―」、同じく作家の小山宙哉さんの「宇宙兄弟」など、心動かされる作品はいまも心トキメキます。

昨年こどもたちと本屋さんへ行った時のことです。心動かされる表紙に出会いました。作家遠藤達也さんの「SPY×FAMILY」です。実は表紙に使われている椅子の数々は名作椅子ばかり。気になってアニメを観てみると、ポップな色使いに配色、ストーリー展開含めて登場するキャラクターも魅力的で、特に最近はまっています。

 

作中に登場するリビングにも名作家具がズラリと並んでいます。Louis Poulsen(ルイス・ポールセン)のPH5(1958年)、Le Gorbusier(ル・ゴルビュジエ)のLC2(1928年)、Frank Lloyd Wright(フランク・ロイド・ライト)のTALIESIN1(タリアセン1;1911年)などなど、ついつい見入ってしまいます。

スパイファミリーリビング

©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会

SPY×FAMILYのホームページ

そこで2026年は、毎月末毎に「SPY×FAMILY」の表紙を飾っている名作チェアについて紹介していこうと思っています!
第一弾は、第1巻に登場する超一流のスパイであるロイド・フォージャー(黄昏)が座るLC2についてです。

 

第一巻表紙

 

LC2

  • 〇名前:LC2/通称”グランコンフォール”
  • 〇発表年:1928年
  • 〇Designer:Le Corbusier(ル・ゴルビュジエ)、従兄弟であり建築のパートナーであるPierre Jeanneret(ピエール・ジャンヌレ)、デザイナーのCharlotte Perriand(シャルロット・ペリアン)と共作
  • 〇Brand:Cassina(カッシーナ)
※ ニューヨーク近代美術館(MoMA)コレクションに所蔵されています(1928年)
LC2「エルシーツー」とそのまま読みます。ゴルビュジエは、1887年スイスに生まれフランスで主に活躍した建築家になります。本名は、シャルル・エドワード・ジャンヌレ(Charles・Edouard・Janneret)です。ル・ゴルビュジエは、建築家としてのペンネームになります。

 

ゴルビシュエ
写真中央がル・ゴルビジュジエ、右がピエール・ジャンヌレ、
左がシャルロット・ぺリアン/Cassinaより引用

 

彼が生まれた1887年は、日本の元号で明治20年です。時代は19世紀の終わり頃。
18世紀ごろからは世界が革命や戦争の時期に入り、建築物が考えられなくなった時代背景があります。そこで落ち着く時期というと、近代建築(19世紀〜20世紀)まで待たないといけなかったのです。産業革命があり、近代建築の建て方になり鉄を多様して大きく高い建物になっていきました。フランスを代表するエッフェル塔もその一つです。彼が生まれた2年後に完成しました。

 

エッフェル塔

エッフェル塔(1889年に撮影)/wikipediaより引用

1910年〜1960年代に成立し発展したモダンファニチャーと呼ばれるデザインのその多くは、建築家の手によるものです。その頃、ドイツのバウハウス始め、構造そのものが美しい家具が生まれていきます。黄金期と呼ばれているミッドセンチュリー時代(1940年〜60年代)、人間工学に基づいた快適性を重視しながらも、成型合板やFRP、プラスチックといった有機的で優しい家具が生み出されています。最近活躍している家具デザイナーというのは、実は最近の話なのです。当時の建築家は家具を自らの建築と合わせてデザインをしています

 

戦前までの日本では、殆どが床座であったことを考えれば椅子そのものの出番は殆どありませんでした。家具と共に、私たちの生活を支えるようになったことを考えると本当にごくごく最近の話なのです。

 

LC2はル・ゴルビュジエの作品として知られていますが、従兄弟であり建築事務所のパートナーであるピエール・ジャンヌレ、デザイナーのシャルロット・ペリアンと共に作り上げた名作です。「大いなる快適」と名付けられるほどの一品です。上質な黒の本革とスチールパイプとの調和は高級感を感じる組み合わせです。主人公役のロイドのイメージにぴったりのソファだと感じています。大企業の重役室にあるような重厚なイメージですが、アニメの中に登場するリビングに置いてもしっくりくるところに懐の深さが伺えます。
2人掛け
一人掛け(W760)、二人掛け(W1300)、三人掛け(W1800)、オットマン(W725)の展開で、今も販売されています。

 

彼は装飾を用いた建築様式を否定し、合理性を信条とするモダニズム建築を提唱します。この名作椅子は、そんな彼の建築思想をよく表していると思います。けれども、当時彼の家具が世に出た1928年のLC2は、スチールパイプの家具に馴染みが薄いことや、装飾を排したミニマルなデザインは、豪華絢爛な伝統的家具に慣れ親しんだ人々には理解されにくいものでした。この家具が再び脚光を浴びるのは1965年のこと。デザインに対する強いポリシーを有するイタリアの家具メーカーカッシーナ」社からこの名作が復刻されることになったのです。同年にル・ゴルビュジエはこの世を去っています。77歳でした。フランスは彼を国葬にしました。

LC2トリミング

イラスト:シチロメグミ

張り替えでよく相談されるのは、LC1スリングチェアの方です。座る人によって背の傾きを変える椅子です。本革の滑らかな艶も、経年と共に痛んでしまうこともしばしば。せっかくのお椅子なのでなんとかならないかと。眺めるだけでも美しい椅子です。革の魅力も再現し、また使って欲しいと思いながら張り替えています。

 

LC1各部パーツ

LC1斜め後ろから_張り替え後

LC1_横から

LC1装着前

LC1肘部分

次回は、2巻 アーニャ・フォージャーが座るマシュマロソファをご紹介します!