Vol.9 ベッキー・ブラックベルが座る「ココナッツチェア」
ひつじのぬいぐるみを抱えながら、ちょっと大人びた表情で椅子に寝そべっているのは、アーニャさんの親友、ベッキー・ブラックベル。

画像出典:集英社公式ホームページ
名門ブラックベル家のお嬢様らしく、いつもどこか大人びた言動を見せるベッキー。でも、アーニャと一緒にいるときは、恋の話に夢中になったり、ちょっと背伸びをしてみたり。おとなっぽさと子どもらしさ。そんな二つの顔を持っているところが、ベッキーの魅力なのかもしれません。そんなベッキーが座っているのが、今回ご紹介する「ココナッツチェア」です。

まるでココナッツの殻?
まず目を惹くのが、この独特なかたち。
名前の通り、割ったココナッツの殻を思わせるような、丸みを帯びたシェルです。その中に、三角形の一辺が少し長く作られていて、身体を受け止めるスペースをつくっています。きちんと正面を向いて座るというよりも、少し身体をずらしてみたり、横向きになったり。その人が自分の心地よい姿勢を見つけられる、自由な椅子です。

ベッキーらしい椅子
そう考えてみると、この椅子。なんだかベッキーに似ていると思いませんか?
「名門ブラックベル家のお嬢様」と聞けば、礼儀正しく、きちんとしている女の子を想像します。でも、実際のベッキーはもっと自由。大人びた顔を見せたかと思えば、アーニャと恋の話に夢中になる。お嬢様らしいところもあれば、年相応の女の子らしさもある。
ココナッツチェアも同じです。
一見すると、とても個性的で「座り方が決まってそう」なのに、実際には身体を自由に預けることができる。見た目はちょっと大人びているけど、中身は自由。そんなところが、ベッキーと少し重なって見えてしまうのは私だけ。。。

そして、アーニャさんとのつながり
ここで、Vol.2を思いだしてください。
以前このシリーズでご紹介した、アーニャさんが座っていた「マシュマロソファ」。あの椅子をデザインしたのも、ジョージ・ネルソンでした。そして今回、ベッキー座っているココナッツチェアもネルソンのデザイン。実は、これは偶然でしょうか。いえ、偶然ではないと思います。作者の遠藤さんは、9巻の表紙について「アーニャの巻と同じデザイナーさんでとらえました」と言っています。
アーニャとベッキー。
二人の仲良しな関係を、同じデザイナーの椅子で表現しているのです。そう思って9巻の表紙を見ると、ただベッキーが椅子に座っているだけには見えなくなってきます。アーニャの隣にいる、大切な親友。そのベッキーのために選ばれたのが、自由な姿勢を受け止めてくれるココナッツチェア。なんだか、とてもベッキーらしい一脚に思えてきませんか?
1956年から、いまも
ココナッツチェアが開発されたのは1956年。今から70年も前の椅子です。それでも、その形はいま見ても古さを感じさせません。むしろ、ベッキーが座っているピンク色のココナッツチェアを見ると、どこかポップで、いまの時代の家具のようにも感じます。

現在もハーマンミラー社から復刻されており、オリジナルのデザインを受け継ぎながら、シェルにはよりサステナブルなポリマー素材が使われています。1956年に生まれた椅子が、70年近く経ったいまもこうして漫画の表紙に登場する。それだけでも、名作椅子というものの面白さを感じます。
〇今回の一脚
- 〇名前:coconut-lounge-chair(ココナッツラウンジチェア)
〇発表年:1956年(48歳の作品) - 〇Designer:George Nelson(ジョージ・ネルソン)
〇Brand:Herman Miller(ハーマンミラー)→アメリカ・日本・極東などの正規販売元 - Vitra(ヴィトラ)→ヨーロッパ・中東の正規販売元

イラスト:シチロメグミ
次回、10巻の表紙だけ少年時代のロイドが瓦礫に座っているのか!を入口にして、椅子が持つ意味を考える記事にいたします。どうぞお見逃しなく!!