良いものをつくる前に、良い問いを見つけよう
高野中学校 「椅子革命」の授業で考えたこと
先日、京都市立高野中学校の総合的な学習の時間にお招きいただき、授業をさせていただきました。
今回のテーマは、「椅子革命」
生徒の皆さんが、学校で使っている椅子を題材に、
・いまの椅子の状態を知る
・使っていて感じることや改善点を探す
・椅子の素材やつくり方を調べる
・実際に改良してみる
・実際に座ってもらい、客観的に評価する
・その結果をもとに、さらに改良する
ということを繰り返しながら、「より良い椅子とは何か」を
考えていくプロジェクトです!
最終的には、椅子のアイデアを生かし、素材の良さを引き出した椅子をつくることを目指されています。

最初は「インタビュー」のみの予定でした
先生から最初にお話をいただいたときは、生徒の皆さんから椅子についてインタビューを受ける、というところから始まりました。その後、先生と何度もやり取りをさせていただきました。「今回の総合学習では、最終的に何を目指しているのか」「生徒の皆さんに、どんなところまで考えてほしいのか」などなど。分からないところは、その都度質問し、実際に生徒の皆さんがまとめた中間発表も拝見しました。
そこで感じたことがありました。
椅子をより良いものにするためには、もちろん「どうつくるか」という技術も大切です。けれど、その前に大切なことがあるのではないかなと思いました。それは「そもそも、わたしたちは何を良くしようとしているのか?」というところです。そこで先生に提案させていただいたのが、今回の出前授業でした。
良いものをつくる前に、良い問いを見つける
今回、生徒の皆さんと一緒に考えたかったのは、「良いものをつくる前に、良い問いを見つけよう」ということでした。椅子について考えるとき、私たちはつい、「座りやすい椅子にするにはどうしたらいい?」「背もたれをどうする?」「どんな素材を使う?」といったところから考え始めます。もちろん、それも大切です。
ただ、その前に少し立ち止まって、「そもそも、座るって何だろう」「椅子って何だろう」と考えてみる。そんなところから授業を始めました。

座るは、本当に「椅子に座る」だけなのか
わたしたちは普段、何気なく座っています。
学校で授業を受けるとき、食事をするとき、本を読むとき、仕事をするとき、誰かと話すとき、休憩するとき。。。
けれど、「座る」という行為を少し広く見てみると、そこにはその人の生活や行動、周りの環境がつながっています。だからこそ、「椅子を変える(改良)」だけではなく、「椅子を取り巻く生活を見る」ことも大切なのではないか。そんな話をしました。
授業では、デザインを考えるときの一つの流れとして、
観察→気づき→疑問→発想→カタチという流れも紹介しました。
いきなり「アイデアを出してください」と言われてもなかなか難しいものです。でも、まず自分たちの周りをよく見る。「いつもこうしているけれど、なぜだろう」「ここは少し不便ではないか」「みんなが当たり前だと思っているけど、本当にそうなのか」
そんな小さな気づきが、やがて問いになり、そこからアイデアが生まれることがあります。

「当たり前」を疑ってみる
今回の授業では、椅子の歴史についても少し触れました。椅子は最初から現在のような感じで使われるものではありませんでした。人の暮らしが変わり、社会が変わり、技術や素材が変わる中で、時代に影響をされ我々におりてきました。権力を示すための椅子。人が集まるための椅子。仕事をするための椅子。食事をするための椅子。「椅子」という一つの道具を見ても、その背景には、人の暮らしの変化があります。
だからこそ、当たり前を疑ってみる。椅子に座った後の人の動きをつぶさに追ってみたり、環境の要因でそうなっていることを考えてみたり、「どうしてそんなことをするのだろう。」「だったら、椅子は本当はどうなっていたらよいのだろう。」と、一度問い直してみる。
そこに、これからの椅子を考えるヒントがあるのではないかと思っています。

授業を終えて、生徒の皆さんから届いた言葉
授業の最後に、(ホント短い時間でしたが)生徒の皆さんに感想を書いてもらいました。
ある生徒さんは、
「椅子を作るときには、いま班で椅子を集めて特徴を出して「こうしたら」という議論をしていたけど、日々の日常で無意識に行っていることを観察したり、そこから気づきや疑問を出していくことを後の時間で活用していこうと感じました。」
と、書いてくれました。「椅子を調べる」だけでなく、椅子を使っている自分たち自身を見る。そこから問いを見つける。そんな視点に変化してくれたことが、とても嬉しく感じました。
また、
「椅子の技術だけでなく、そもそも椅子とはどんな物か、歴史や道のりについて理解することができました。」
という感想もありました。単に形や形状の問題として捉えるのではなく、今回の授業で少し視野を広げてもらえたかなと思います。

「普段ふつうに思っていることにも目を向ける」
別の生徒さんは、
「椅子のアイデアが具体的に思いつかなかったけど、今回の授業でアイデアの見つけ方(観察が大切だということ)を教えてもらい、日常(当たり前)を見直そうと思うきっかけになった」
と、書いてくれました。
さらに
「普段ふつうに思っていることにも、目を向けることが大切」
という言葉もありました。これは、まさに今回の「良い問いを見つける」という話につながっています。アイデアやひらめきは、必ずしも「何か新しいもの」と捉える傾向が「デザイン」には強くあると思います。いつもの風景、いつもの行動、いつもの椅子、いつもの座り方、そうしたものを、少しだけ違う角度から見てみる。そこから「なぜ?」が生まれることがあります。普遍的でふつうなことが、より幸せなものづくりへとつながるように思えてなりません。

次はいよいよ「問い」をもってインタビューへ
今回の授業は、答えのない世界だから、どんな問いをもつのかを考える時間でした。授業を終えて、生徒の皆さんからいただいた感想を読みながら、私自身も考えさせられています。そして次週はいよいよ、ゆめおり椅子の工房に来てインタビューです。今回の授業で見つけた「気づき」や「問い」が、どんな質問になって出てくるのか、それを聞くのをいまからとても楽しみにしています!

最後に、高野中学校の先生方、そして授業に参加してくださった生徒の皆さん、貴重な機会をありがとうございました!!